遊歩百景

書き物をします。

Drops In The Ocean (wavelet)

列車の辷る音が烟る遠く

白く淡い印象を胸に落とす

輪郭は間断もなく溢れ落つ

左手に掴んだ細い砂のように


水泡が破ぜゆく 貝殻が遊ぶ

あらゆる情景が 深く還り融和する

しょうもない冗談に 苦笑していた顔

残滓を追い掬えど 灼ける胸は潤えない


あの去し須臾は

浸潤しあう時間の渦に

未だ息づいているのに

それは知っているはずなのに

掻痒にさえ通ずる

思慕を慰安するには

いつまで沈めばいい?

ねえいつまで沈めばいいの?


すぐそばにいて欲しい

間違いを叱って欲しい

手にそっと触れて欲しい

平気そうに笑って欲しい


つがいの潮風が戯れる

脆く薄い残香を鼻腔に残す

漸次に朱を増す残照を頼り逍遥しても

藹然として右手には触れない


あの去し須臾は

浸潤しあう時間の渦に

未だ息づいているのに

それは知っているはずなのに

恐怖にさえ通ずる

悔恨を慰安するには

いつまで沈めばいい?

ねえいつまで沈めばいいの?


すぐそばにいて欲しい

間違いを叱って欲しい

手にそっと触れて欲しい

平気そうに笑って欲しい


波が呑んでしまう

波が解いてしまう


すぐそばにいて欲しい

間違いを叱って欲しい

手にそっと触れて欲しい

平気そうに笑って欲しい