遊歩百景

書き物をします。

紅に散りゆく命は

この斜陽に染められたの?

手に入れ得ないものを欲して

憧憬の炎に燃え


恋情は墨のそれに如く

妖艶な疼痛を蒔いて走り

酔いしれる感情と意識に

己が美を想わせ染む


さあでは

私の身はどのような色味を

映じているでしょう?

うつせているでしょうか?

あなたの色を少し


ぴんと張る糸を爪先で弾き

いっそとなんて考えてしまう

きっと誰も哀しい思いで

なのに馬鹿だと笑っておくれ


凛然と肌を舐める風に

か細い身をふるわせて

最後に触れた吐息の熱を

ただ恋焦がれる


ええそれは

底意地の悪いえ覚めない夢

与えちゃくれないくせに

離れるほど鮮烈に

裾をひいてくる


ぱっと目を伏せる一瞬の隙に

真っ黒い影がその深さを増す

狂わせておくんな 何も分からないほどに

そんな何度目か知れないことを思い眠る


あっと言う間に時代は

さっと命を転がしてしまい

やっとの思いでその身にうつした

色も憧憬さえ死んでゆく