遊歩百景

書き物をします。

2022-01-01から1年間の記事一覧

愚問

はやく、死にたい。楽に。解放されたい。死ぬ過程に不安があるから生きているだけで、それさえ安らかなものであれば、生きていたくなどないのだから。 過ぎた願いでしょうか。

老妻

白状すると、希死念慮がこれほど悲しいものだとは、思わなかった。これほど遣る瀬無いものだとは、知らなかった。起伏の波はあるにせよ、幼少の頃からずっと持ち続けていた感覚であり、その状態が普通だと思っていたし、それがどういったものか知ってもいる…

自罰

順調に生活している人々のことを、妬んだり、羨んだり、逆恨みしたりしないよう、自らを抑え込むのも、楽ではない。それらの感覚は、不作為的に生まれるものである。根が張られる度に、自分の肉ごと腕ずく引き抜くその痛さよ!穴ぼこだらけの土壌を眺むその…

2022/9/21

耐え難い夜だ。ひたすらに落ち着かないが、何をするのも億劫だ。本も読めない。映画も観られない。アイデアも出ない。制作が進まない。何もできない。無駄に時間を潰すだけ。叫び出したい衝動を、努力して抑えている。 やはりずっとこんな調子なのだろうか。…

喜悦

このごろ、しばらく前までは感ぜられていた、作品を創る喜びを、あまり覚えていない。無論、以前だって、十のうち一、二の喜びがある程度で、残りは苦しみやら憂鬱やらで占められており、別に大して欣然と事に及んでいた訳ではなかったが、それでも、今より…

姉、ないし兄へ

私は弟との二人兄弟であるが、実は両親は私の前に一人、死産を経験している。このことはずっと昔に、父親に聞かされたことだ。母親とは、その話をしたことはないように思う。 例によって、その時分私は何かしらの理由で父から説教をくらっていた。理由は覚え…

不義理?

ああ、最低な私の人生!

憧憬

『フロオベエルはお坊ちゃんである。弟子のモオパスサンは大人である。芸術の美は所詮、市民への奉仕の美である。このかなしいあきらめを、フロオベエルは知らなかったしモオパスサンは知っていた。フロオベエルはおのれの処女作、聖アントワンヌの誘惑に対…

絶望と美

絶望の底にいる時ほど、ものが美しく見える瞬間はないのかもしれない。 まだ私を誑かすのか。

3rd album 『Wavelet』リリースしました。

表題の通りですが、この度3枚目のフルアルバム『Wavelet』が完成しました。「さざ波」という意味です。 ------------------------------ 【楽曲リンク】 3rd album 『Wavelet』 https://distrokid.com/hyperfollow/f3c284d/wavelet ------------------------…

rule (wavelet)

万物を司る ア・プリオリなルール その完全性は 知り得ないなら 青白いベッドルームで 悴んだ手に触れる 柔らかい熱も 所詮は蜃気楼というのか 存在や時間の彼岸に 思いを馳せたりはしないかい? 生や死は始発や終点を意味してはいない え去らぬ 永劫に また…

Drops In The Ocean (wavelet)

列車の辷る音が烟る遠く 白く淡い印象を胸に落とす 輪郭は間断もなく溢れ落つ 左手に掴んだ細い砂のように 水泡が破ぜゆく 貝殻が遊ぶ あらゆる情景が 深く還り融和する しょうもない冗談に 苦笑していた顔 残滓を追い掬えど 灼ける胸は潤えない あの去し須…

蕩尽 (wavelet)

大気を裂いて唸る光陰にもう 衷心よりビビっちゃって心停止しそう 気づきゃみんなその全盛を終え 胡乱に蛇行する一炷の煙を吐く燼余と化す 瞬間々々に一体何を為した? 滑稽なショーの主演張って受領する 二足三文に縋る腕は折れそう 自明と無縁の時間性のポ…

籠鳥 (wavelet)

鉄格子の間隙より 差し込んだ陽光に目を覚まし 干上がるような喉を 塵埃の浮く水で辛うじて潤す 罪状は一体何か 見当は枚挙に暇がないが 仮令何万回詫びようと 間違いは撤回不能でしょう 与え奪う希望の明滅 翻弄される尾籠な浮沈は芸か 生も死もえ選ばず 惰…

bottle ship (wavelet)

星座の間に潜む 淡く霞みゆく童夢 どうしようもないこの俺を ねえどうか拐えよ 大気のあわいに覗く 無数に散る童夢 若い骸を詰め込んで ふっと吐息で放そう 平穏を願う癖して 性懲りもない言明で 台無しにしたりして 柔い腕のうちで 目を閉ざし揺曳する 妄想…

よろめき (wavelet)

浅い夢は海泥 残影が纏繞して まどろみの破れるあわいに 揺れる微笑に覚えず いつかのそれのように触れる カーテンを開いて 差し込んだ陽を受け 絵画のように遠ざかりゆく美をつい 呆然と見送ってしまう コールバック、伝言はない 時間を示す表示のみが目に…

ta-pi-ra-pi (wavelet)

損なうことはないと思っていた ついに与えられた救いと そう信じていた 確かにあった愉快さを また欲しているのに それを得るための手段が お互いに見えていない 遠くに旅行しようとも 下手なジョークを弄しようとも 気を遣わせてしまうのみ さも底のない汚…

『ingの終わり』 (wavelet)

水路に如かんばかりの相性の様相 かえって異様なくらいに好候 今が完璧に近いほどに怖い いつ何時失うとも知れないと 煩悶は離れないさも溶接みたいに 要領よくいなせない現状が痛い この愚直さを愛の要件と言えるの? ろくすっぽ己さえ知らん癖して もうそ…

Day2 (wavelet)

果敢ない微笑に添える用の花を 暗中に探し続けているような 果てのない渉猟に 見出す幸運の合図は 無上の一巻の終わり さあ手を繋いで性懲りもない 出鱈目な社交ダンスを踊ろう 昨日の今日も構いやしないよ また朝を迎えられますように 寝足りない10時 シー…

chu-chu (wavelet)

chu-chu 思考回路は散漫 いらん想像連発して柔さが分かりゃせん chu-chu 可愛い顔は爛漫 瞠目したって内情の方は見えやせん 懊悩は已まん 十五時半のタリーズ 溶解するクリーム ストローに移るラメ入りのリップ 先刻より妙に脚が当たるのは 偶然なんでしょう…

ours (wavelet)

スッと通りゆかない コームの目を睨み 嘆息をつく憂鬱なモーニングルーティン 時計がわりのニュースを消して トーストで軽く済して ちょっとでもいい想像してみてよ 何の用もない癖に一張羅で街へと繰り出してみよう 変にもつれ合い大笑いしよう 透明にしか…

盲管銃創 (wavelet)

万朶の花弁にさえも如けり 豊饒に過ぎる明眸 嗚呼いでや 玉容は瑕瑾もない 目線合えど弁疏のしようもない 華奢な肩の重みやらを 受ける度背を駆け抜ける不徳 体温をさも盗人かのように掠める 安堵しようもないような 光輝を放つ銃口 這う舌の蠕動に濡れ 鮮烈…

tear drop (wavelet)

暗い想念が合わせ鏡のように際限なく 襲いくるんでしょう? 苛むそれらは 思い出を敷衍しているに 過ぎないんだそうな そりゃ真偽のほどは分かんないけど 背負い込んでいる全ケース 自分ばかり悪いんじゃないって もう薄々感づいているんでしょう? 呑み込ん…

vampire (wavelet)

宵の今に化そうvampire 白い首筋に咲いた紅 不完全な笑みでいい乾杯しよう 永劫奪うのは他の手に因らないように 月光の染む蓮の香を喰らい 犇いた蠢動の気配 ふいに嘆息がひとつ漏れ出で キャンドルの灯も潰えた 遠吠えが静の統制を裂いて肥え太る そんな騒…

overslept. (wavelet)

不穏な暗礁に乗る 久遠の実相 纏繞を為す暁光 尾籠さを暴く明眸 円環状の断章に潜む 未曾有の病症 矮小なる褒賞 寸毫値しようもない 遠い安寧の音を追い 老獪なる傀儡の糸を払い 逃避行をしよう 台無しになった一切を置いていこう 深部へ行かん 甘い倦怠感 …

沈潜

沈んでゆく。 胸がつまる。 手指が痺れる。 喉がこわばる。 私は、揺られている。 水泡が背をなぞる。 くすぐられるもどかしさに気が抜ける。 一つ大きな息を吐く。 肺の収縮を感じる。 私は、揺られている。 きっと、滑稽なんだ。 なにもぜんぶ、おかしいん…

だめ

私は、台無しにすることしかできない。 私は、自分のためにしか涙を出せない。 私は、裏切ることしかできない。 私は、もう何も考えられない。 私は、もう何もわからない。 私は、もう頑張れない。 私は、エゴイストだ。 私は、きっとだめだ。 もう、だめだ。

美徳

戦うことに、何の価値があろうか。 耐えることに、何の意義があろうか。 抗うことに、何の益があろうか。 それは、蛮勇である。 それは、妥協である。 それは、欺瞞である。

朝、朝。 私は朝に犯される。 鳥、車。 青い光に犯される。 目覚めの気配が、どれだけ怖いか。 清潔な匂いが、どれほど酷いか。 ねえ、あなた、知ってる? 私、自殺のことばかり考えるの。 明日が来ないようにと、いくらいくら祈っても、どうしてもやって来…

眠り

もう、何もしたくない。 明日なんていらない。 何も考えたくない。 悩みたくない。 苦しみたくない。 悲しみたくない。 痛がりたくない。 悶えたくない。 明日なんていらない。 いらない。 いらない。 いらない。 ただ安らいでいたい。 何も心配しないで、た…