遊歩百景

書き物をします。

2020-03-31から1日間の記事一覧

手紙 (愚者礼賛)

手紙 久しぶりにお手紙を差し上げます お元気ですか 私はというと眠られない日が続いています 不躾とは承知しておりますがどうか 私の悩みを聞いていただけますか 私はひどく疲れたのです 近頃日を浴び飯を食う度生きることが無性に 浅ましくばかり感ぜられ…

烏 (愚者礼賛)

烏 ささくれ爪で引きやった 真っ赤な命が膨らんで じくじく痛むその口に吸いついてみた 煮崩れかけてる夕焼けが べっとり広がり貼り付いて 手を振る少女の影法師 隣で曲がった 猫らの脅嚇 枯葉の衣擦れ 連れてって 気付かず呟いた 一羽烏がぱらりと飛んだ 撓…

僕はもう誰にも (愚者礼賛)

僕はもう誰にも 白いカーテンを開いた 光が舞い込んで 注いだ水で戯れた いつか君が褒めてくれた 気まぐれな髪型 あの日みたいに再現してみよう 慌ただしい街を抜けて やっと探し当てた君は いつよりも誰よりも ずっと綺麗に笑っていた 馬鹿みたいだ あれほ…

可変妓楼 (愚者礼賛)

可変妓楼 雑な作りの秘密ね 月夜を引き延ばしたような 浮かぶ明かりは頼りない 今宵の価値をあらためるにも 何を隠し何を避けて何を求め何を守るの 耳元で吐き捨てた息の熱飲み下して 薄っぺらな安い膜にすがりついて糸を繋いで 下らない月並みな指切りする…

魑魅飼い少女 (愚者礼賛)

魑魅飼い少女 燦々だ!雨上がった 目覚ましは肩すかし小鳥が鳴く 鏡さんのぞき込んでお粉はたいて ちったぁ、ちったぁってのたまった パルパラリラ パルパラリラ あたし泣いてもダメなんです パルパラリラ パルパラリラ フリルのひだ知らん顔 讃嘆だ! 目を…

地獄行きの唄 (愚者礼賛)

地獄行きの唄 お上様御成だ蚊よりしげく猛る羽音呪わしい 一同渋面ご挨拶 知らぬ顔で持ち場着けば安らぎへと運び給へと 両手を合わせて申し入り しかじかしてこの輩甚だ不遜 今こそ裁きを悪辣な如才に下さむ ぐらりと業火が揺らめく焼き場 義理なし者には似…

present (愚者礼賛)

present 便りもないままに 木々の色が変わる 身体を伝っていく 冷気に遊ばれている 笑わなくても 時間は流れ この時さえも 私じゃないものが膨れてく 知らないふりを したい訳じゃない 無知な優しさ せめてまだ感じていたいだけ 可愛くあるうちに(その間に) …

Diver (愚者礼賛)

Diver か細い足先を伸ばして ミルクの薄膜を割るように 凪いだ水面を乱す 優しい引力にひかれて 意識を打ち眺め漂って このまま帰ってゆく 気泡に映り込むかの現世 それごと飲み下し悶えて いっそ瞼を閉じる 汚れた呼気を皆吐き出して 細胞一つずつ冷めやっ…

夢に夢見し五里夢中 (愚者礼賛)

夢に夢見し五里夢中 呆れ果てて放り 例の悔いがいざりよりけり 若き日々は遠い 誕生以来の老いた兵なのさ 窓を開ききって 何も捨てて生き返れたら 都合よくてsorry 青い鳥待ちオレの悪しき癖 ああ妬いちゃうないつまでも 夢の中でお前を抱いたら 冷たい笑み…

六本木~摩天楼に咲いた夢~ (愚者礼賛)

六本木~摩天楼に咲いた夢~ ここは六本木さ誰もの憧れ 熱き夢を語った誰かの片割れ 飛び交う愛憎シーン 落ち合うお偉いさん 夜を裂く艶然ボイス 身一つじゃ足りやしない 浮かれた観光人 つまずくお嬢さん GPSも狂乱す 導け彼処に 狐狸の類につままれたような…

指 (愚者礼賛)

指 指が背中なぞって なにか僕に伝えた 柔く華奢な形状さえ 気のせいか僕は感じた 緩慢な遊戯が続いて この神経を嬲った 暗く佇んだ部屋で これだけが意味を持った 指が胸をなぞって 危険な摩擦生じた 呼吸に乗せて蠕動し 白い蛇のようだった 散漫な遊歩がや…

original imitation (愚者礼賛)

original imitation everybody 今日も肝心なところ everybody 虚妄見えないフリして乗り込んだ 夢を運べよ護送車 everybody 構想まばゆい暮らし everybody 消耗明日の英気を養おう 箸を運べよ功労者 誠実が美徳だなんて 勘違いして いい喰いもんにされてんだ…

Good, you? (愚者礼賛)

Good, you? 苦しめど特に割には合いやしないね 私はどうにもならないままでいるの 馬鹿みたい! 慄けど眠りゃ日が来る否応もないね 私はなんでか元気なままでいるの 分からない! 生れて、すみません。