遊歩百景

書き物をします。

2020-03-23から1日間の記事一覧

裁判

「ねえ、もう許しておやりよ」 油くさい声がきこえ、私は意識を取り戻した。 眼前ではユイが両手のひらを顔に押し当て、めそめそ震えていた。 その隣で、太った女が彼女の肩を撫でこちらを睨んでいる。 私は、全くの無罪であった。 ユイの不義密通を責める気…

空間とも地平ともつかないどこかに、凪いだ純水が満ちて居た。 それは見事な透明色で、塵埃はおろか、如何許りの細菌類さえ存在していないようである。 美しいその水は、コップのような形の地形の、縁のほんの手前までせり上がっており、息をふっと吹きかけ…