遊歩百景

書き物をします。

bottle ship (wavelet)

星座の間に潜む

淡く霞みゆく童夢

どうしようもないこの俺を

ねえどうか拐えよ

大気のあわいに覗く

無数に散る童夢

若い骸を詰め込んで

ふっと吐息で放そう


平穏を願う癖して

性懲りもない言明で

台無しにしたりして

柔い腕のうちで 

目を閉ざし揺曳する 

妄想は果然雲散霧消する


今あるものを見ようとせず

無為に部屋を荒らし散らす

左手を破片が刺す

流れる血の色に 

安堵をさえ感じ

吸い付いてみては咽ぶのみ


生存の所以はない

無論そこに意味の類さえもないが

已然胸奥を揺らす

その音は救いたるや否や


飛沫の肌膚に踊る

自由に歪む童夢

しょうもないこの俺を

ねえ思うまま笑えよ

枝垂れる火の奉ずる

潺湲たる童夢

若い骸を詰め込んで

ふっと吐息で放そう


香をでも焚くように

苦痛や憂愁を薫じ

仰々しく塞ぐ精神

穢い空気を吸い

色を変える壁に

奇妙な懐かしさを禁じ得ない


彷徨

化膿しゆく創傷

負うたままで永劫

無い安寧の幻影を不毛に追う

倨傲

道中にもう不要と

捨て置いたものの九相図

纏繞を已まぬ譫妄のよう


緑青の葉を穿つ

光輝を放つ童夢

救いようのないこの俺を

ねえ飽きるまでどやせよ

夜陰の繊を解く

豊穣たる童夢

若い骸を詰め込んで

ふっと吐息で放そう


星座の間に潜む

淡く霞みゆく童夢

どうしようもないこの俺を

ねえどうか拐えよ

大気のあわいに覗く

無数に散る童夢

若い骸を詰め込んで

ふっと吐息で放そう