人
過去の我曰く、恋は妥協。
今日の我曰く、恋は生の渇望。
君は、堕したと嘲り笑うだろうか。
だが、君、見給え。
見てくれが上等だろうが違おうが、女を侍らせ、顔のあらゆる筋肉を弛緩せしめたる、あの青年こそ、生の体現者そのものではないか。
今日は右手に在るおきゃんを抱き、明日は左手の淑女を抱く。
それでいいではないか。
徒労が、誤解が、鼓動が、酔いが、湿り気が、胸元が、首筋が、汗玉が、一切合切を呑み、荒れ狂い、やがては、悔悟。それで良いではないか。
抱け!老婆も人妻も、みんな抱け。
天邪鬼は、やがて、倨傲も虚しく、悩乱、果たして、乳房に吸い付き、刹那、百の歳をとり、死ぬ。
畜生に、お成りなさい。
それは他でもない、人間賛歌の体現だ。
君、それでもまだ生きていたいかね。
H.26