遊歩百景

書き物をします。

指 (愚者礼賛)

 

指が背中なぞって なにか僕に伝えた

柔く華奢な形状さえ 気のせいか僕は感じた

緩慢な遊戯が続いて この神経を嬲った

暗く佇んだ部屋で これだけが意味を持った

 

指が胸をなぞって 危険な摩擦生じた

呼吸に乗せて蠕動し 白い蛇のようだった

散漫な遊歩がやがて 筆跡と化し謎めき

嫉妬に燃えた脳裏は 快哉叫んで爛れた

 

興を削がないように 素面に戻らぬように

必死に悶えて 絶えず薪をくべ

まるで贋物のような 化学化合物のような

色香に平伏し せめて恩恵に浴せるように

 

気まぐれな微笑が 悪びれず嘯き

媚態を装い また打擲する

艶然と玩弄を 施す肢体の

折れそうな指は 如何様な秘密で命保つのか