遊歩百景

書き物をします。

Diver (愚者礼賛)

Diver

 

か細い足先を伸ばして

ミルクの薄膜を割るように

凪いだ水面を乱す

 

優しい引力にひかれて

意識を打ち眺め漂って

このまま帰ってゆく

 

気泡に映り込むかの現世

それごと飲み下し悶えて

いっそ瞼を閉じる

 

汚れた呼気を皆吐き出して

細胞一つずつ冷めやって

また力が抜ける

 

誰一人さえ傷つけたくなかった

繰綿のように

笑い返せれば分かり合える気がした

無邪気さのまま

 

期待してはだめ

 

誰一人さえついに愛せなかった

ただ羨むだけ

全て捨て去った振りして棚に上げ

深く沈みゆく