遊歩百景

書き物をします。

僕はもう誰にも (愚者礼賛)

僕はもう誰にも

 

白いカーテンを開いた 光が舞い込んで

注いだ水で戯れた

いつか君が褒めてくれた 気まぐれな髪型

あの日みたいに再現してみよう

 

慌ただしい街を抜けて やっと探し当てた君は

いつよりも誰よりも ずっと綺麗に笑っていた

 

馬鹿みたいだ

あれほどに大事そうにしていたものが

違う誰かに差し出される 嬉しそうな顔で

新しい美しい景色を知るたびに いつか分け合えたらと望んだ 世話ない

 

いつかふざけて撮った写真 春の風に乗せて

新たな種を送っていた

 

振り向きざま揺れる髪が 水面に散る花のようで

差し出した手のひらで そっと受け止めてみたかった

 

馬鹿みたいだ

誰よりも大事に思っていた人は

確かに苦しめられている他でない僕に

それでなおあくまでも傷つけまいとした優しい人よ羽を癒して せめて

 

生まれてきたことがそもそもの間違いでしょう

1人にさえも望まれぬまま

ひっそり死にゆく

 

馬鹿みたいだ これほどに胸の中渦巻く

悔いや慚愧や罪の意識さえも 行き場をなくした

この先の絶え間ない 君の歩む道が

幸せに満ちていますように 永遠に