遊歩百景

書き物をします。

可変妓楼 (愚者礼賛)

可変妓楼

 

雑な作りの秘密ね 月夜を引き延ばしたような

浮かぶ明かりは頼りない 今宵の価値をあらためるにも

 

何を隠し何を避けて何を求め何を守るの

耳元で吐き捨てた息の熱飲み下して

薄っぺらな安い膜にすがりついて糸を繋いで

下らない月並みな指切りするだけ

 

あたしアカデミー賞モノ可憐な少女なの

半端に残されているスカートイラつく

余裕なさそうな顔眺めていればいいの

冷めた目が閉じていく 惰性じゃ連れない

 

髪の隙間にのぞいた いつかの香り落とした

ぬるく背を伝う水が 妙に知ったようで嫌になる

 

誰を隠し誰を避けて誰を求め誰を守るの

耳元で吐き捨てた息の熱飲み下して

大味な安い泡に身を絆して糸を紡いで

遣る瀬無い酔狂な指切りするだけ

 

あたしアカデミー賞モノ嗜虐の王女なの

矢継ぎ早な韻を踏み思わずフラつく

苦しそうに歪む顔蹴りつければいいの

冷めた目が離れていく 虚勢じゃ連れない

 

あたしこのままきっと誰にもなれないの

指先は膝を抱く背中に届かず

そして忘れられて虚しく消えゆくの

ささやかな葬いも叶わないままに