遊歩百景

書き物をします。

rule (wavelet)

万物を司る ア・プリオリなルール

その完全性は 知り得ないなら

青白いベッドルームで 悴んだ手に触れる

柔らかい熱も 所詮は蜃気楼というのか


存在や時間の彼岸に

思いを馳せたりはしないかい?

生や死は始発や終点を意味してはいない

え去らぬ 永劫に


また快哉や苦悩をも 内包するルール

その確実性は 理解し得ないなら

夕の風に舞い遊ぶ 髪の送らせる

甘い安寧も 所詮はがらんどうというのか


理性や空間の彼岸に

身を灼いたりはしないかい?

生や死は捕囚や解放を意味してはいない

え去らぬ 永劫に


え去らぬ 永劫に


え去らぬ 永劫に

Drops In The Ocean (wavelet)

列車の辷る音が烟る遠く

白く淡い印象を胸に落とす

輪郭は間断もなく溢れ落つ

左手に掴んだ細い砂のように


水泡が破ぜゆく 貝殻が遊ぶ

あらゆる情景が 深く還り融和する

しょうもない冗談に 苦笑していた顔

残滓を追い掬えど 灼ける胸は潤えない


あの去し須臾は

浸潤しあう時間の渦に

未だ息づいているのに

それは知っているはずなのに

掻痒にさえ通ずる

思慕を慰安するには

いつまで沈めばいい?

ねえいつまで沈めばいいの?


すぐそばにいて欲しい

間違いを叱って欲しい

手にそっと触れて欲しい

平気そうに笑って欲しい


つがいの潮風が戯れる

脆く薄い残香を鼻腔に残す

漸次に朱を増す残照を頼り逍遥しても

藹然として右手には触れない


あの去し須臾は

浸潤しあう時間の渦に

未だ息づいているのに

それは知っているはずなのに

恐怖にさえ通ずる

悔恨を慰安するには

いつまで沈めばいい?

ねえいつまで沈めばいいの?


すぐそばにいて欲しい

間違いを叱って欲しい

手にそっと触れて欲しい

平気そうに笑って欲しい


波が呑んでしまう

波が解いてしまう


すぐそばにいて欲しい

間違いを叱って欲しい

手にそっと触れて欲しい

平気そうに笑って欲しい

蕩尽 (wavelet)

大気を裂いて唸る光陰にもう

衷心よりビビっちゃって心停止しそう

気づきゃみんなその全盛を終え

胡乱に蛇行する一炷の煙を吐く燼余と化す


瞬間々々に一体何を為した?

滑稽なショーの主演張って受領する

二足三文に縋る腕は折れそう


自明と無縁の時間性のポーリングアート

のどこにおけど間断のない臨床

眩暈も掻痒もどうもなりゃしないよ

いったい処方箋の頓服何錠飲もうが


瞬間々々に一体何を見た?

あっぷあっぷの渦中に辛うじて抑える

風景は精緻な残影のあわい


病臥して 喰っちゃ寝

挙句失念 期待に濡れちまい

気焔をあげ 果然倒れ

もう幾遍もしたろう?

思い出しなよ

敢えない収斂 笑えもしねえ

醜い流涕 詮ない愛憐中も

止まぬ加齢 放蕩の末

スカンピンに成り果てる


去し死と来る生の匂いの

汚染を受ける万物は冗談みたいに不浄

もう信用おけやしないよ

この胸中に抱く五感の情報、思想、感情も


逃亡の術なんかない 緩慢なる懲役

右往左往のうちに耄碌しちゃい

くたばっちまうのに

不毛にぶり返す疲労、懊悩に

浸り込んでしまう


病臥して 喰っちゃ寝

挙句失念 期待に濡れちまい

気焔をあげ 果然倒れ

もう幾遍もしたろう?

思い出しなよ

敢えない収斂 笑えもしねえ

醜い流涕 詮ない愛憐中も

止まぬ加齢 放蕩の末

スカンピンに成り果てる


病臥して 喰っちゃ寝

挙句失念 期待に濡れちまい

気焔をあげ 果然倒れ

もう幾遍もしたろう?

思い出しなよ

敢えない収斂 笑えもしねえ

醜い流涕 詮ない愛憐中も

止まぬ加齢 放蕩の末

スカンピンに成り果てる

ああもういつになったら楽になるんだ

答えてくださいよ ねえ

籠鳥 (wavelet)

鉄格子の間隙より

差し込んだ陽光に目を覚まし

干上がるような喉を

塵埃の浮く水で辛うじて潤す


罪状は一体何か

見当は枚挙に暇がないが

仮令何万回詫びようと

間違いは撤回不能でしょう


与え奪う希望の明滅

翻弄される尾籠な浮沈は芸か

生も死もえ選ばず 惰性で毒餌さえも喰らう

痺れる両翼を呪うて

宵闇へ向かい高い叫声を上げる


疲れに酔うてしまい

糜爛を植えし火焔の熱を忘れ

また再演へ向かう


例の隙間より陰陽を畳みし

朧に烟る宵月を睨み

それを美しいとさえも思う

未だに残る呑気さに失笑する


害したのは一体誰か

見当は枚挙に暇がないが

仮令何万周しようと

間違いは回避不能でしょう 


正し乱る希望の濃淡

陵辱される徒な消長は興か

是も非もえ選ばず 覚束ない感情に縋る

掠れる両の目を覆うて

宵闇へ向かい高い叫声を上げる

bottle ship (wavelet)

星座の間に潜む

淡く霞みゆく童夢

どうしようもないこの俺を

ねえどうか拐えよ

大気のあわいに覗く

無数に散る童夢

若い骸を詰め込んで

ふっと吐息で放そう


平穏を願う癖して

性懲りもない言明で

台無しにしたりして

柔い腕のうちで 

目を閉ざし揺曳する 

妄想は果然雲散霧消する


今あるものを見ようとせず

無為に部屋を荒らし散らす

左手を破片が刺す

流れる血の色に 

安堵をさえ感じ

吸い付いてみては咽ぶのみ


生存の所以はない

無論そこに意味の類さえもないが

已然胸奥を揺らす

その音は救いたるや否や


飛沫の肌膚に踊る

自由に歪む童夢

しょうもないこの俺を

ねえ思うまま笑えよ

枝垂れる火の奉ずる

潺湲たる童夢

若い骸を詰め込んで

ふっと吐息で放そう


香をでも焚くように

苦痛や憂愁を薫じ

仰々しく塞ぐ精神

穢い空気を吸い

色を変える壁に

奇妙な懐かしさを禁じ得ない


彷徨

化膿しゆく創傷

負うたままで永劫

無い安寧の幻影を不毛に追う

倨傲

道中にもう不要と

捨て置いたものの九相図

纏繞を已まぬ譫妄のよう


緑青の葉を穿つ

光輝を放つ童夢

救いようのないこの俺を

ねえ飽きるまでどやせよ

夜陰の繊を解く

豊穣たる童夢

若い骸を詰め込んで

ふっと吐息で放そう


星座の間に潜む

淡く霞みゆく童夢

どうしようもないこの俺を

ねえどうか拐えよ

大気のあわいに覗く

無数に散る童夢

若い骸を詰め込んで

ふっと吐息で放そう

よろめき (wavelet)

浅い夢は海泥 残影が纏繞して

まどろみの破れるあわいに 揺れる微笑に覚えず

いつかのそれのように触れる

カーテンを開いて 差し込んだ陽を受け

絵画のように遠ざかりゆく美をつい

呆然と見送ってしまう


コールバック、伝言はない

時間を示す表示のみが目に染み入る

ティーバックを冷え切ったカップから

取りだした拍子に液晶を濡らす


嘘に付帯していた軋みが消えた

触れる手がまた柔くなった

見覚えのないくらいに

綺麗さを増してゆく瞳

鷹揚に濡れて射るように座している


愛猫のような要求は

遠く手を離れていってしまった

煩わすものはもうない

平穏な宵は呆れてしまうくらい

もうどこまで行こうとも本当で

耳の鳴るように蕭条


感情が水溶性だとしたら

合羽も傘も置いて黒い街頭へ行ってしまうのに

実際は重くなったスニーカーを引きずって

覆うような寒さに震え敗走するだけ


懐中で湿りを受けてしまったシガーは

仮令ライターで幾度炙ろうとも

火は点じようもない


笑みに付随していた憂いが消えた

会話をキスで簡単に埋め出した

広い部屋薄い灯り

重い目線が蟻みたいに

写真の上部で踊る


さあ栓を抜こう 酔いこなそう

あてがいましょう最高に愉快なるショーを

灰のノイズの海を逍遥し

畢竟灯りを落とすのも

錠を下ろすのも

能わないそんな滑稽な虚栄心を

あと何杯のショットが満たす? 


ほんのもう少々でもいい

スヌーズしよう

安寧と懊悩との引き換えの要する

諦念が十分とは言えない


浅い夢は海泥 残影が纏繞して

まどろみの破れるあわいに 揺れる微笑に覚えず

いつかのそれのように触れる

カーテンを開いて 差し込んだ陽を受け

絵画のように遠ざかりゆく美をつい

呆然と見送ってしまう


移ろいはさも蹌踉のよう

飄零しゆく淡い桜花

その残香を呑む細い背さえ

緩慢にそっと 倚れるように

ta-pi-ra-pi (wavelet)

損なうことはないと思っていた

ついに与えられた救いと

そう信じていた


確かにあった愉快さを

また欲しているのに

それを得るための手段が

お互いに見えていない


遠くに旅行しようとも

下手なジョークを弄しようとも

気を遣わせてしまうのみ

さも底のない汚泥の沼に

放り込まれたみたいに

動くほどに沈む


ta-pi-ra-pi-ra-pa

ta-pu-ra-pi

ta-pu-ra-ta-pa-ra

ta-pi-ra-pi-ra-pa-ra

ta-pa-ra-ra


ta-pi-ra-pi-ra-pa

ta-pu-ra-pi

ta-pu-ra-ta-pa-ra

ta-pi-ra-pi-ra-pa-ra

ta-pa-ra-ra


同じ状態で永劫に留まる術や法はない

愛憎を強引に飲み下しているうちに

自分さえも他者の面になる

況や……


自然重奏していた

寝返りの振動や呼吸の音も

全然違うように感ぜられてしまう


デザートをつけてみようとも

家財を新調してみようとも

嘘をつかせてしまうのみ

所詮映画みたいな再演を

望むしか能わないのか

際限なく沈む


ta-pi-ra-pi-ra-pa

ta-pu-ra-pi

ta-pu-ra-ta-pa-ra

ta-pi-ra-pi-ra-pa-ra

ta-pa-ra-ra


ta-pi-ra-pi-ra-pa

ta-pu-ra-pi

ta-pu-ra-ta-pa-ra

ta-pi-ra-pi-ra-pa-ra

ta-pa-ra-ra


ta-pi-ra-pi-ra-pa

ta-pu-ra-pi

ta-pu-ra-ta-pa-ra

ta-pi-ra-pi-ra-pa-ra

ta-pa-ra-ra


ta-pi-ra-pi-ra-pa

ta-pu-ra-pi

ta-pu-ra-ta-pa-ra

ta-pi-ra-pi-ra-pa-ra

ta-pa-ra-ra